東京高等裁判所 昭和31年(ネ)1044号 判決
証拠によると、被控訴人は、日本殖産興業株式会社が本件土地を所有していた当時同会社からこれを賃借し、その地上に建物を所有していたところ、昭和一九年一二月疎開によつて右建物が除却されると共に、右借地権を失つたが、昭和二二年一二月二七日右会社に対し、建物所有の目的で本件土地の賃借を申し出で、同会社が右申出を受けた日から三週間以内に拒絶の意思表示をしなかつたことが認められるから、臨時処理法第九条によつて準用される同法第二条によつて右期間が満了した昭和二三年一月一八日同会社は右賃借の申出を承諾したものとみなされ、これによつて、被控訴人が本件土地の賃借権を取得したものということができる。
控訴人等は、「被控訴人の日本殖産興業株式会社に対する本件土地の賃借の申出は、当時被控訴人が市街地建築物法施行規則第一四五条による地方長官の認可を受けていなかつたから、無効である。」と抗弁し、右賃借の申出当時本件土地が市街建築物法に基いて指定された防火地区内にあり、被控訴人が右の如き許可を受けず、またその認可申請手続もしなかつたことは、当事者間に争のないところである。しかし、臨時処理法第二条第一項但書にいわゆる「他の法令により、その土地に建物を築造するについて許可を必要とする場合」とは、法令上一般的にその土地にいかなる建物を築造するについても許可を必要とする場合をいうものと解すべきである。従つて市街地建築物法施行規則第一四三条の規定する、火災予防の目的のために一定の具体的構造の建物を築造するについて認可を必要とする場合はこれに含まれない。故に被控訴人が当時右規定による地方長官の認可を受けていなかつたからといつて、被控訴人の本件土地の賃借の申出を無効とすることはできない。控訴人等の抗弁は理由がない。
(角村 菊池 吉田豊)